式辞・講話

令和6年度第3学期 始業式校長講話

 皆さん、明けましておめでとうございます。

 年末年始はあっという間に過ぎ去ってしまった感じですが、充実した冬休みを過ごすことができたでしょうか?気持ちを新たに、新しい目標を立て、新たな決意で今日を迎えた人も多いことと思います。 

 今年は巳年。ヘビは脱皮をしながら成長していくことから、新しいことの始まりを象徴すると言われています。この新しい年が皆さんの成長につながる素晴らしい一年になることを願っています。

  今日は、まず初めに、昨年12月18日に皆さんに注意喚起した、インターネット上に本校を名指しで西高の生徒及び教職員に危害を加える旨の犯行予告が書き込ま れていた件ですが、先日警察から連絡があり、「IPアドレス等をたどって犯人を突き止めた。犯人は千葉県在住の未成年の少年で、本校はもとより埼玉県とは全く関係がない人物で、犯行の理由については、深い意味はなかったと供述している」とのことでした。万が一西高関係者に何かあったら取り返しがつかないと、連日警察と対応してきた側としては、警察に捕まりホッとしている反面、犯人に対しては、ふざけるなという怒りの気持ちでいっぱいです。

  今回の件を通じて、ネット上への悪質な書き込みは、加害者は、ちょっとからかってやろうくらいの軽い気持ちで書き込んだとしても、被害者にとってはとてつもない恐怖心を与えてしまう本当に許せない卑劣な行為であり、警察の捜査で逮捕される犯罪なんだということ、そして、私も含め、ここにいる全員が、ネットを普段利用している者として、SNS等の正しい使い方を常に意識して、軽率な書き込みは絶対にしないということを改めて確認したいと思います。併せて、今回の件で、連日早朝から夜遅くまで頻繁にパトロールをし続けてくれた浦和警察署の警察官の皆さんへの感謝の気持ちは忘れてはいけないとも思います。

  さて、今日は、3学期の始業式に際し、「人間万事塞翁が馬」略して「塞翁が馬」という中国の格言について話したいと思います。ひょっとしたら、国語の授業で習った生徒もいるかもしれませんね。

  これは中国の前漢時代、今から約2,200年前に書かれた「淮南子(えなんじ)」という書物の中に記された格言だそうです。「人間(じんかん)」は、ここでは「人生」という意味、「万事」は「すべてのこと」、「塞(さい)」というのは「砦」または「お城」のことで、「翁(おう)」は「お爺さん」という意味です。直訳すると、「人生のすべての出来事は、塞翁の馬のようである」といったところでしょうか? こんな話です。

  昔、中国のお城の近くの村に、おじいさんが、一人息子と住んでいました。そのおじいさんの唯一の財産は、一頭の馬でしたが、ある日、その唯一の財産の馬が逃げ出してしまいました。すぐ村人たちが集まって来て、「大変ですね。」と、おじいさんを気の毒がって慰めに来ました。でも、おじいさんは平然として「いやいやこれは何か良いことの始まりかもしれん。」と言いました。

  その後、二、三日すると、その馬が帰って来て、しかもその馬より更に良い名馬を一緒に連れて帰ってきました。すると、村人たちは、すぐに、「おじいさん素晴らしい、良かったですね。」と集まってきました。でもおじいさんは、今度は「いやいや、これは何か悪いことの始まりかもしれん。」と言いました。

 すると、今度は、名馬に乗っていた一人息子が落馬して足を複雑骨折してしまって、歩けなくなってしまいました。また、村人がやって来て、「おじいさん、えらい災難ですね。」と見舞いに行くと、おじいさんはやはり、平然として「いやいや、これは何か幸福のもとになるかもしれん。」と言いました。

  その翌年、隣国との戦争がはじまりました。村の若者はほとんど全員が、戦闘に駆り出され、ほとんどが亡くなってしまいました。しかし、おじいさんの一人息子は足を怪我して歩けなかったので、兵役を逃れ、戦死せずに済みました、という話です。

  村人のように一喜一憂するのではなく、おじいさんのように、どのような状況であってもどっしりと構えよ、ということを教えてくれる格言だと思います。

  皆さん一人ひとりにとっても、勉強面や部活動、仕事やあるいはプライベートなどで、伸びたり、伸びなかったり、上手くいったり、いかなかったりと、それぞれの塞翁が馬があると思います。

  うまくいく時もあれば、ダメな時もある。楽しいこともあれば、つらいこともある。それが、人生です。だからこそ、人生はおもしろい。大切なのは、どのような状況であっても、慌てふためくことなく、ぶれることなく、お爺さんのように、一喜一憂するのではなく、どっしりと構えること。そして、一見良くないことが起こった、その時こそ、これはチャンスかもしれないと考え、前を見据え、自らの歩みを進めていこうと、逆にいいことが続いた時には慢心せずに、有頂天にならずに、謙虚な気持ちを大切にして過ごそうと、まさに「人間万事塞翁が馬」、そんな人生をお互いに送っていきたいものです。

  校長として西高に着任して以来、授業や学校行事、部活動など、様々な場面で、何事にも一生懸命取り組む西高生の姿、そしてそれを見守り、温かくご指導してくださっている先生方の姿を目にする度に、私は、この浦和西高校を大変誇らしく思っています。

  だからこそ、皆さんには、これからの長い人生の中で、どんな状況にあっても、例えば、慌てふためいて判断がぶれてしまったり、心が折れてしまい、諦めてしまったりすることが決してないよう、例えば、気持ちが慢心して有頂天となり、自分自身を見失なってしまうことがないよう、塞翁が馬の教えにあるような、将来社会のリーダーとして活躍するための人間としてのベース、土台の部分を、この西高でしっかりと育んでいってほしいと思います。

 今日から始まる3学期は、言うまでもなく、1年間の総まとめの時期となります。今年度努力し続けてきた事を、最後までやり通し、立派に仕上げる、つまり、それぞれの「有終の美」を飾ってほしい。

  3年生の皆さん、今、最後の追い込みで大変な毎日を過ごしていると思います。ただ、この時期、受験に対して変に不安になったり、ジタバタしたりする必要は全くありません。現役生は最後の一瞬まで実力が必ず伸び続けます。絶対に第一志望校に合格するんだという強い覚悟を持ち続け、頑張っている自分を最後まで信じて走り抜けてください。大丈夫。桜は必ず咲きます。

  1・2年生の皆さん、すでに部活動や学校行事など、学校の中心は皆さんです。3年生からしっかりと引き継いだ本校の良き伝統の下、西高をさらに盛り上げていってください。そして、皆さん自身も授業に部活に学校行事にと全力で取り組み、心身共に鍛え抜き、さらなる成長を目指してください。

  自主自立、輝け 西高生! 今学期、皆さん一人ひとりが、どのような有終の美を飾ってくれるのか楽しみにしています。