式辞・講話

令和5年度 修了式校長講話

   早いもので、令和5年度も、本日修了式を迎え、締め括ることとなりました。今年度、皆さんにとっては、どんな1年だったでしょうか。1年前の自分と比較して、ほんの少しでも、成長することができたでしょうか。

  先日、本校で西高つくり懇話会というものが開かれ、今年度の本校の教育活動について、大学教授や地元近隣の方々、同窓会やPTA後援会関係の方々、生徒会執行部の皆さんから意見を伺う機会がありました。そこで、このような意見がありました。

 地域の人たちは、西高生をよく見ている。いつも一生懸命に行動している西高生は地域の誇りである。

 地域との交流会で、西高の生徒が自分たちで研究している内容を発表してくれる機会があったが、西高生の素晴らしい発表に大変な感銘を受けた。

 1年生で英語のワークショップを開催したとき、西高生たちの自分の意見をしっかりと主張できる積極的な行動力に当日指導にあたった大学のゼミ生たちが驚き、そして心から感動していた。

 このように、外部の方々からの西高生に対する高い評価を伺うことができ、本当にうれしく思いました。

   私も、4月に西高に着任して以来、この1年間、自主自立の精神のもとで、授業や学校行事、部活動にと、本当に主体的に一生懸命取り組む西高生や、そして君たちのことを第一に考え、君たちの主体的な取組を温かく支えてくれている先生方の姿を見させていただき、今や、心の底からこの西高を大変誇らしく思っています。

 さて、今日は、修了式にあたり、スポーツ界と音楽界で活躍されている二人の方の話を紹介したいと思います。

   1人目は、サッカー日本代表選手として活躍している、日本が世界に誇るMF三苫薫選手です。彼の突破力の高いドリブルは、日本はもとより、世界のサッカー界からも高い評価を得ていることは皆さんもよく知っていることと思います。

 三苫選手は、高校時代、Jリーグチームの下部組織からトップに上がれる話を受けながらも、「プロでやっていける自信がない」と大学進学を選びました。「サッカーの1対1場面における攻撃側の情報処理に関する研究」これは、三苫選手が大学で書いた卒業論文のタイトルです。頭に小型カメラを着けてデータを取り、ボールをもらう際の自分と他の選手の目の動きを比較、研究し、論文にまとめたものだそうです。

   彼は、大学時代、全体練習後も、1対1場面での対応技術を、来る日も来る日も、特訓したそうです。しかも、納得できるまで終わりにすることなく、グランドが使えなくなる時間まで続けたそうです。それ以外にも、かつて日本記録を出した陸上競技部の監督にも教えを請い、ドリブルに生かすため、走るだけではなく止まったり動いたりすることを素早く切り替える練習にも励みました。こうして、ドリブル技術の精度を高めていったのです。プレー以外でも、食事や睡眠など、良いと言われる方法を聞けば何でも試し、例えば、体作りのため、白飯1・5合の定食を食べた後、部屋でパスタをゆでたこともあったとか。

   自分が成長できることなら、何でも試してみる。そうした努力の末、相手が想定したドリブルの逆をついて抜くことができたり、相手があらゆる対応をしてきても突破できるといった世界屈指のドリブラーへと進化していきました。そしてその進化は終わることなく、今もなお、世界最高峰のイングランド・プレミアリーグで技を磨き続けているのです。

   2人目は、音楽ユニットとして日本だけでなく海外でも大変人気の高い、YOASOBIのボーカル、幾多りらさんです。

  YOASOBIの曲は、自分は群青という曲が大好きですが、テンポが速く、旋律が目まぐるしく動き、ラップも織り込まれている難しい曲が少なくありません。しかし、彼女の歌声は、その難しさを見事にこなしながらも、歌へのいちずな思いを、私たちの心に響かせてくれています。

    彼女は「物心ついた頃から歌が大好きでした。寝る時間以外は歌っているくらい歌と一緒に生きてきました。『絶対にこれだ』と思って進んできたんです。」と語っています。3才までシカゴに住んでいたこともあって、幼少期から、身の回りには洋楽が溢れていましたが、たとえ、言葉の意味が全く分からなくても、とにかく英語をまねて歌っていたそうです。彼女曰く「元々できなかったことでも食らいついて行って、どうにかして自分のものにしようとする姿勢は、子供の頃からだったのかもしれません。」とも語っています。彼女が小学生の頃に思い描いた夢は、自ら曲を書いて歌うシンガーソングライターになること。小学6年生の頃にはギターで作詞作曲を始めていたそうです。「何か動き出さなきゃ夢がかなえられない」との思いで、中学3年生の頃には音楽関係のオーディションを受けたり、路上ライブを行ったりと、本格的な活動を開始したそうです。

   今や日本を代表するアーティストとしての不動の地位を手に入れ、ドーム公演や海外のステージで素晴らしいパフォーマンスを見せてくれていますが、今、彼女は23才で、19才でメジャーデビューですから、ほんの数年前、君たちと同じ年齢くらいの頃には路上ライブ等でいちずに夢を追いかけていたことになるでしょう。彼女は、「夢をかなえるためには、いろんな手段を使って一歩でも近づきたかった。路上の怖さよりも、何もしない自分の方が怖かったんです。」と当時の心境を語っています。

   三笘選手と幾多りらさん、この二人に共通していることは何でしょうか。それは、大好きなことに対して、誰からも強制されることなく、自らの意思で行動を起こしていること。そして、自分の夢の実現に向かって、たとえ、自信がなかったり、不安があったとしても、そんなことで歩みを止めることはせず、自らを高めることにとてもハングリーであり、ストイックでもあり、決して妥協をしなかったことではないでしょうか。

   勉強でも、部活動でも、趣味でも、他の人に言われた通りにやっているうちは、うまくなるのも、強くなるのも、力がつくのも、たかが知れています。そうではなくて、自分で考えて、自ら進んでやるからこそうまくなるし、伸びるし、目標も達成できる。これこそが、西高が最も大切にしている自主自立なのではないでしょうか。

   西高は、この自主自立の精神のもと、自由な校風で知られています。大前提として、西高には生徒準則はあるものの、他校にあるような校則はありません。校則がないということは、行動を規制をしなくても、概ね自分で適切に判断し、行動できるのが西高生だからです。自分で考えることができる、易きに流されず、自分の好きなことを追及しようと思う。そういった自主自立の精神と、それを実践するための基本的なスキルが身に付いているのが西高生なんだということです。

   もちろん、自主自立を曲解し、自由を履き違え、なんでもかんでも好き勝手にやっていいということではないし、他人を無視し、倫理観を軽んじて、自分の価値観のみで行動しても構わないということでも当然ないわけです。自分自身を易きに流させない強い自制心、社会で適切に生きていく上での高度な判断力がベースになければなりません。その上で、自らの興味関心を深め、自分の好きなことを、ハングリーに、ストイックに、本気でトコトン追求する。これこそが西高の自主自立の伝統であり、この伝統を君たちには、今後も大切にし続けてほしいと思います。

   4月から、新たな勉強や学校行事に部活動、新たな高校生活が始まります。そして新たな仲間や後輩との出会いも待っています。4月になれば、新入生が入ってきます。君たちには、4月からくる新入生に、本気で自主自立を追及している姿を見せてほしいと思います。そして、今年迎える創立90周年にふさわしく、浦和西高校をさらにバージョンアップしてくれることを大いに期待しています。

   自主自立、輝け 西高生