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2021年9月の記事一覧

万葉の庭の紹介⑩

本校の中庭にある万葉の庭の花を紹介します。(西麗会:万葉の庭より)

20 からあゐ(ケイトウ)

「秋さらば移しもせむとわが蒔きしからあゐの 花を誰か摘みけむ」

(巻七ー一三六二)

*大意

「秋が来たら染料にでもしようと、わたしが蒔いておいた鶏頭の話を、誰が摘んでしまったのだろう。」

*ひと言

「花を惜しむ歌として大意(直訳)のままに解釈しても、それはそれでよいのだが、も少し深い意味もありそう。つまりそのうちにと狙っていた娘を、どこぞの誰とも知れぬ男に横取りされて、地団駄踏んでいる歌と読み解いたほうが、より面白いのでは?

「移し」は、布に擦り移すことで、移し染めのこと。染色技術はもともと韓国から入ったもので、ケイトウは「韓藍」といわれ、染料として珍重されていたのであろう。

*植物メモ

おんどりの鶏冠(とさか)のような花の形から、鶏頭の名がついた。古くから渡米し、上の歌のように染料用ゃ観賞用に栽培されていた。花は赤がふつうだが、現在では黄や白のものも見られる。

 

「鶏頭の黄色は淋し常楽寺」 漱石