式辞・講話
令和5年度第2学期 始業式校長講話
今年の夏は、本当に猛烈な暑さが連日続いた夏でした。そんな厳しい暑さの中であっても、夏期補講に部活動、文化祭準備にと、皆さんが一生懸命取り組んでいる姿を折りに触れ見ることができました。恐らく多くの皆さんが充実した夏休みを過ごすことができたのではないでしょうか。
さて、今日は、始業式に際し、この夏休みに私が読んだ本などを通じて考えさせられた「人に寄り添う」とはどんなことなのか、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。少し哲学的な話になってしまうかもしれませんが、しばらくの間付き合ってください。
皆さんは、「バカの壁」という本を聞いたことがあるでしょうか。この本は、解剖学者の養老孟司さんが約20年前に書いた本で、当時ベストセラーとなったので、ひょっとしたら、皆さんの中には読んだことがある人もいるかもしれません。自分も、この夏休み、久し振りに読み返してみました。その本の中にこんな一節があります。
イギリスのBBC放送が制作した、ある夫婦の妊娠から出産までを詳細に追ったドキュメンタリー番組を、某大学の薬学部の学生に見せた時のことです。
学生たちに、この番組の感想を求めたところ、男子学生と女子学生とでは、はっきり異なる反応が出たそうです。
ビデオを見た女子学生のほとんどは「大変勉強になりました。新しい発見が沢山ありました。」という感想でした。一方、男子学生は皆一様に「こんなことは既に保健の授業で習ったので、知っていることばかりだ。」という反応で、同じものを見ても、男女で正反対の反応の違いが出てきたのです。
この違いはどこから生じるのか、その答えは、与えられた情報に対する姿勢の問題であると養老さんは言っています。つまり、男子学生は「出産」ということについて実感が薄く、想像力を働かせることが十分ではなかった。その結果、女子のような発見ができなかった、むしろ積極的に発見しようとしなかった。一方、女子学生の方は、「出産」を自分ごととして捉え、ディテールまで見て、「新しい発見をした。」という反応になったのだと。
話は変わりますが、先日こんな新聞記事がありました。
今から約10年前に大阪・心斎橋で通り魔事件が起きました。Sさんはその犠牲者で、当時42歳。この事件でSさんを含め2人が犠牲となってしまいました。犯人の男は、1審の裁判員裁判で死刑判決を受けましたが、2審では無期懲役となりました。大きな理由は「計画性が低い」「殺害された被害者は2人にとどまる」などと判断されたことだったそうです。
Sさんの妻は、「2人『しか』殺していないからだなんて、この国の裁判所が言うことなんですか?」と憤り、2人の娘の父親を奪った男に再び極刑を言い渡してほしいと願っていましたが、後の最高裁判決でも結論は変わらず、無期懲役が確定しました。
皆さんは、この新聞記事についてどう感じますか? 確かに裁判での判決は公的なものであり、判断する際の基準が、過去の判例を踏まえ、計画性や、被害者の数となることは仕方のないことかもしれません。一方、被害者側としては、自分の大切な人を単なる数字で処理されて、不本意な判決が下されてしまったという憤りの感情は容易に想像できます。司法の世界で、被害者の心情に寄り添うということはどういうことなのか、考えさせられる話です。
出産ビデオに対する男子学生と女子学生との反応の違いも、裁判官の判断と被害家族の感情との違いも、実際にその差が簡単に埋まることは難しいかもしれません。ただ、相手の心情や考えに対して、最大限の想像力・洞察力を働かせれば、少しは、相手の立場、境遇を理解し、相手の心情に近づくことができたかもしれません。
自分とは違う生育歴や経験を持った相手の考えや感情等を完全に理解することは、とても難しいことです。ただ、相手の境遇や心情を理解するために、自分のこれまでの知識や体験等を総動員して、最大限の想像力・洞察力を発揮することによって、そのギャップを少しでも縮めることは可能かもしれません。
私は、ここに、あらゆる学問を勉強する意味、様々なことを体験する意味があると思います。
例えば、あらゆる教科・科目の学習を通じて自然界や社会の営みなどを学んだり、学校行事、部活動などを通して、様々な体験や人との交流をしてみたり、あるいは、読書などで、例えば、夏目漱石の「こころ」やドフトエフスキーの「罪と罰」を読んで、人を死に追いやってしまった罪悪感と自己嫌悪から来る心の葛藤を擬似体験してみたりすることで、自らの想像力・洞察力の幅を広めたり、深めることができ、自分とは違う他人の心情を少しでも想像できる人間性を高めることができるのではないでしょうか。
こういった想像力や洞察力は、将来皆さんが多様な価値観を背景に持つ様々な人たちとの信頼関係を築く上で、リーダーとしての不可欠な資質でもあると思うのです。
最後にディズニーランドであったあるエピソードを紹介します。
ディズニーランド内のレストランにある若い夫婦がやってきました。夫婦は、それぞれの食事を注文した後、さらにお子様ランチを注文しました。これに対し、ウェイトレスはマニュアル通りに「大人だけのお客様にはお子様ランチはお出ししておりません。」と答えました。
その時、その夫婦は、次のような話をしました。実は、二人には小さな子どもがいて、いつもこのレストランで食事をしていました。ところが、最近その子どもが亡くなってしまい、その子を偲び、できれば一緒に食事をしている気持ちになりたいと思って注文したというのです。
ウェイトレスは、その話を聞き、「わかりました」と言って注文を受けました。やがて、お子様ランチが運ばれてきました。この話はここでは終わりません。次にウェイトレスは、同時に幼児用の高い椅子を運んできて、夫婦の間にそっと置き、3人での食事場面を演出したのです。夫婦はいたく感動し、涙を流したそうです。
お客様の状況をしっかりと観察し、あるいは話をしっかりと聞いた上で、自らの想像力・洞察力を働かせ、目の前のお客様のためにどう対応するのがベストなのか、そのお客様の本当の想いに寄り添った的確な判断を自らが行い、マニュアルにはないことを、勇気を出して実行に移したのです。
皆さんにとって、この西高での高校生活では、様々な教科・科目の勉強や、部活動・学校行事などでの体験を通じて、様々な知識や色々な人との出会いがたくさんあると思います。
皆さんには、そうした機会を通じて、自分の知識の幅を深め、体験の幅を広げていくことによって、相手の心情を少しでも想像し、理解し、寄り添うことができる高度な想像力・洞察力を身に付けていってほしい。そして、将来の社会のリーダーとして必要なさらなる人間力の向上に努めていってほしいと思います。
今日から2学期が始まります。文化祭を皮切りに、修学旅行、新人大会など、様々な行事が目白推しです。全員で西高をさらに盛り上げていきましょう。
特に明後日から始まる文化祭日程ですが、期間中に、学級閉鎖や学年閉鎖にならないよう、そして、文化祭を成功させるためにも、くれぐれも、換気、手洗い等の手指消毒、必要に応じたマスク着用、陽性者以外は出席停止になりませんが、体調不良時の登校自粛など、基本的な感染防止の徹底を全員が心掛けてください。
自主自立、輝け、西高生。
今学期、皆さんにとって実りの多い高校生活になることを期待しています。
令和5年度第1学期 終業式校長講話
この1学期は、生徒会行事や体育祭、球技大会といった大きな行事を、皆さんの力で、大いに盛り上げてくれました。また、部活動でも、試合の応援に行く先々で、最後まで決して諦めずにプレーする姿や、あるいは発表会等で完成度の高いパフォーマンスを見せてくれたりなど、運動部・文化部問わず、皆さんから熱い感動をたくさんいただきました。
皆さんが見せてくれたこれらの西高スピリットをこれからも大切にして、西高をさらに盛り上げていってほしいと思います。
今日は、終業式に際し、この西高の自由な校風の中で、さらに自分を高めていくために、皆さんに2つのことをお話したいと思います。
1点目は、皆さんには、他の模範となるべき高度な立ち振る舞いを、常に心がけてほしいということです。
今学期の初め、生徒指導主任の先生から「いい大人になろう。そのためにも時の管理、物の管理、身体の管理をしっかりやろう」という話がありました。併せて、各学年集会等で「凡事徹底、当たり前のことを当たり前のようにやろう」という話もありました。この1学期、皆さんは、いい大人に近づけたでしょうか。凡事徹底できたでしょうか。
今からいくつか質問するので、この1学期、自分を律することができたか、自分自身に問いかけてみてください。
提出物や課題を期限前にちゃんと終了、提出することができたか。朝学習の時間、気持ちが乗らず、スマホいじりに時間を費やしてしまった日はなかったか。どんなに部活動などで疲れていても家庭学習を毎日欠かさずに習慣化することができたか。クラスや部活動で、互いをリスペクトし、良好な人間関係を築くことができたか。交通ルールを守りながらの登下校を心掛けてきたか。
実際、登下校については、近隣の小・中学校のPTAの方々からは、西高生は元気よく気持ちのいい挨拶を毎朝してくれますというお褒めの言葉いただく一方で、耳の痛い話ですが、近隣の方から、「道路いっぱいに広がって、人が通ろうとしても避けてくれない。」「注意したら、うるせーと言われた。」などの苦情が学校に寄せられました。大変残念なことです。皆さんには、「西高生としての自覚と誇り」をしっかりと持ってほしい。
私は、校長として、この浦和西高校は、将来社会のリーダーとして活躍する人材を育てる学校だと思っています。なぜなら、皆さんには、それに値する資質・能力が十分備わっていると思っているし、何よりも自主自立の精神のもと、他校生には見られないものすごいエネルギーを、皆さんに感じているからです。10年後、20年後、30年後には、皆さんが、社会のリーダー的存在として、世界のどこかで、社会貢献していることを本気で期待をしています。
ただ、たとえどんなに素晴らしい知識・能力やエネルギーを持っていても、正しい判断や適切な行動ができなければ、リーダーとしての信頼を得ることはできません。ですから、皆さんには、ぜひとも、自分を律し、他の模範となるべき高度な立ち振る舞いを常に心がけてほしいのです。
正しいことを自らの意思で実行する行動力、周りの状況を的確に観察し、どう行動すべきなのかを適切に判断する力、自ら決めたことを継続する力、他人を思いやり、人の心の痛みがわかる優しさ、そして、人のためにという利他の心など、社会のリーダーとして必要な素養、人から信頼される人間性を、この西高でさらに磨いていってほしいと思います。
2点目は、自分の夢や目標の実現に向けて、妥協することなく、最後までやり抜く強い精神力を身に着けてほしいということです。これも社会のリーダーとして必要な素養の一つだと思います。
この最後までやり抜く強い精神力のことを、造語でGRIT(グリット)といいますが、これは4つの英単語「Guts(度胸)」「Resilience(回復力)」「Initiative(自発性)」「Tenacity(執念)」の頭文字をとったものだそうです。アメリカの大学での研究では、『成功する人に共通する特徴は、「情熱」と「粘り強さ」、すなわち、この「やり抜く力(GRIT)」にある』という結果もあるそうです。
高校時代、結果はともあれ、受験でも、部活動でも、何かにおいて、目標に向かって最後までやり切った、やり抜いたという経験は、皆さんのこれからの人生において何事にも代え難い大変価値ある体験となります。
皆さんには、一人ひとり、将来に向けた夢、目標があると思います。身近なところでは、3年生は、第1志望校合格、1、2年生は、大学合格に向けた学力向上、部活動での上位入賞、学校行事の成功といったところでしょうか。ぜひ、現状に甘えることなく、国公立大や難関私大合格、県大会上位入賞、その先の関東大会や全国大会出場などといった、それぞれの高みを本気で目指し続け、最後までその挑戦をやり抜いてほしい。
しかし、目標が高ければ高いほど、それ相応の努力が求められます。時には、失敗や挫折があるかもしれません。弱気になったり、迷ったり、落ち込んだりすることも当然あります。途中で、結果が思うようにでず、辞めたくなったり、目標を下げそうになることも度々あるでしょう。でも、最終的な結果が出る前に、決して自分に負けないでほしい。結果を見ずに諦めないでほしい。最後までやり抜く強い精神力・GRITを育ててほしい。
最後に、明日から38日間の長い夏休みが始まります。自分の時間が格段に増えます。時間を無駄にすることなく有効活用してほしい。GRITを体験するいい機会です。今やSNS等で瞬間的に情報が入ってくる世の中だからこそ、逆にタイパ、いわゆるタイムパフォーマンスを一切気にせず、例えば、じっくり時間をかけて、苦手分野の克服に挑戦してみる、これまでの定期考査や模試の解き直しを納得いくまでやってみる、部活動で、自分の技術を高められるよう、時間をかけて何回も何回も練習してみる、読書や、美術館・博物館めぐりなどを通して、じっくりと感性を磨くなど、勉強に、部活動に、新たな挑戦にと、自分の時間を有効に使って、一つのことをやり抜いてみる。そんな夏休みにしてみてはどうでしょうか。
厳しい夏を乗り越えられれば、必ず実りの秋がやってきます。くれぐれも事故に巻き込まれることのないよう、それぞれの充実した毎日を送って心身ともに鍛え抜いてみてください。
自主自立、輝け、西高生! 2学期、一回り成長した皆さんとお会いすることを楽しみにしています。
令和5年度 入学式式辞
柔らかい春風と希望に満ちた穏やかな陽射しを浴び、正に春爛漫のこの良き日に、PTA会長 白寄 信吾 様、後援会会長 島村 定充 様、同窓会会長 島﨑 富夫 様の御臨席を賜り、ここに第78回 埼玉県立浦和西高等学校 入学式を挙行できますことは、この上ない喜びであります。
ただ今、入学を許可いたしました359名の新入生の皆さん、本校への入学、誠におめでとうございます。教職員一同、皆さんの入学を心から歓迎いたします。
これから皆さんが迎える本校での高校生活は、学習をはじめとするあらゆる教育活動を通して自らを鍛える場です。人生の中で、最も多感であり、また、最もエネルギッシュでもあり、理想とする姿を懸命に追い求める、掛け替えのない3年間となるのではないでしょうか。
その大切な3年間が、本日から始まるにあたり、皆さんに2つのことをお願いしたいと思います。
1つ目は、「決して失敗を恐れることなく、最後まであきらめないたくましさを身に付けてほしい」ということです。
生涯で約1300もの発明を行ったアメリカの発明王、トーマス・エジソンの言葉に、「人生を失敗した人の多くは、あともう少しで成功できることに気付かずに諦めてしまった人たちだ。」という言葉があります。
エジソン自身、三大発明の一つ、白熱電球の開発に、約6000回もの失敗を乗り換え、たどり着くことができました。
自分の可能性を広げるためには、様々な新しいことへの挑戦が不可欠です。
当然、新しいことへの挑戦には、失敗が付き物です。そして、失敗をした時には、精神的に落ち込み、その場から逃げ出したくなるのも人間の心理です。しかし、失敗を恐れるあまり、挑戦することを避け、目先の小さな成功や安定だけを求め続けているのであれば、決してその人の成長は望めません。
今、社会は、グローバル化の進展、人工知能の劇的な進歩、超高齢社会等、これまで人類が経験したことのない急速な変化の真只中にあります。その中であっても、逞しく生き抜くためには、他人任せや受け身の姿勢ではなく、自らの意志で行動する主体性や、失敗を恐れず、新たなことに挑戦し続ける積極性、そしてたとえ失敗したとしても最後の最後まであきらめずにやり抜くたくましさが必要です。
本校には、勉強や部活動、学校行事等、皆さんが果敢に挑戦できる環境が整っています。ぜひ、本校での3年間、決して失敗を恐れることなく、様々な新しいことに挑戦し、昨日の自分を超えていこうという強い意欲と意志、そして、それぞれの夢の実現に向かって、最後まであきらめないたくましさを育んでいってほしいと思います。
2つ目は、「人との新たな出会いを大切にしてほしい」ということです。
今日から始まる新生活では、新しい友人や先輩、先生方と多くの新しい出会いがあります。様々な人との出会いは、自らの価値観を広げ、人生を豊かにする最高の財産となりうるものです。
学校はお互いに尊重し、協力し合う人間関係の在り方を学ぶ場です。一人ではできないことも仲間と取り組むことにより実現できることが多くあることを教えてくれます。時には、意見が合わず、衝突することがあっても、相手を理解し、思いやる心が真の友情を育んでくれます。
しかし、時として、人には、自分と違う個性や考え方、自分とは合わない部分、相手が不得意としている部分を見下したり、批判したり、拒絶したりしてしまう、心の弱い部分があります。ここにいじめの心理的要因があるのではないでしょうか。
今後益々グローバル化が進展していく中で、実に多様な文化や歴史的背景、価値観を持った人々との関わりが増えていくことは必然です。
自分とは異なる価値観や合わない部分だけにしか目を向けず、安易に人を批判したり、拒絶したりするのではなく、それ以外のもっと素晴らしい部分にもしっかりと目を向けて、相手をリスペクトし、思いやり、そして、お互いの考えをしっかり伝え合うことができる、そんな素敵な人間関係を是非築いてください。
本校は今年、創立89年目を迎える県内屈指の歴史と伝統を誇る進学校です。これまで2万8千名以上の卒業生を輩出し、卒業生は様々な分野でその能力を発揮し活躍しています。
本校の使命は「自主自立」の精神のもと、知性と教養、人間性を磨き、将来地域や国際社会に貢献できる社会のリーダーを育成することにあります。新入生の皆さんが、本校の使命をしっかりと理解し、誇り高き西高生の一人として本校の歴史に皆さん自身の手で新たなページを刻んでいってくれることを大いに期待しています。
私たち浦和西高校教職員一同、皆さんの高校生活を、全力でサポートいたします。
保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。入学式に臨み、高校生として第一歩を踏み出した我が子を御覧になり、感慨も一入のことと、心からお喜びを申し上げます。
高校時代は、お子様が大人になっていく上で、多くの知識を身に付け、生徒自身が主体的に考え、行動して、様々な課題に取り組み、解決へと導く能力を養っていく時です。
私たち教職員一同、深い愛情と、時には厳しさを持って、お子様の成長に全力で尽くしてまいります。
しかし、当然のことながら、教育は学校だけでできるものではありません。学校と家庭がしっかりと手を取り合って育てていくことが必要不可欠です。どうか、本校の教育方針にご理解をいただき、ご協力・ご支援を賜りますようよろしくお願い致します。
結びに、皆さんにとって、浦和西高校での3年間が、「最高の3年間」だったと、心からそう言える充実した日々となりますことを祈念し、式辞といたします。
令和五年四月七日
埼玉県立浦和西高等学校長 加藤 元
令和5年度第1学期 始業式校長講話
皆さん、おはようございます。
いよいよ本日から令和5年度が始まりました。午後の入学式での新入生の入学により、1年生359名、2年生356名、3年生357名、計1072名での令和5年度がスタートすることになります。
学年も上がり、新しい環境で、新たな目標を掲げ、今年度も頑張っていこうという気持ちで胸を膨らませているのではないでしょうか。その気持ちを忘れず、充実した1年にしていきましょう。
さて、今日は、始業式にあたり、皆さんにとって、聞きなれない言葉だとは思いますが、「ブレイク・スルー」という言葉について話をしたいと思います。
皆さんは、小学生の頃、例えば、自転車を補助輪なしで乗れるようになろうと、何度も転びそうになりながら練習していると、ある日突然乗れるようになったり、例えば、逆上がりが、最初の頃、いくら練習してもできなかったのに、来る日も来る日も、手に豆を作りながら練習していたら、ある日突然できるようになった、などの経験をしたことがあるのではないでしょうか。
何かへのチャレンジを始めた時、最初の頃は、いくら努力をしても、なかなか成果が出ない。いくら勉強や練習を続けても思うような結果が出せない。ところが、悩み、苦しみながらも勉強や練習をコツコツと続けているうちに、ある時を境に突然できるようになる。このタイミングを、「ブレークスルー」というのだそうです。
しかし、この「ブレークスルー」、厄介なのは、地道な努力を長い期間、それは1か月かもしれないし、3カ月、いや半年以上かかるかもしれない、いずれにせよ、相当長い期間コツコツと続けなければ、なかなか成果が表に現れてこないということです。
最初の頃、練習や勉強を繰り返し行っても、なかなか上手にできない、結果が出ない。何日も何日も「やってもダメ」の繰り返しで、こんな日が続くと、本当につらい。何度もやめたいと思うようになってしまいます。残念なことに、ここであきらめてしまい、続けていた勉強や練習をやめてしまう、または、安易に志望校を変えてしまったり、当初の目標を下げてしまったりということが、結構あるのかもしれません。
そんな時、少しでもいいから結果が見えてくるまで、もう少しがんばってみようとなんとか努力を続けるか。または、もうこれ以上はできないとあきらめてしまうのか。ここに大きなターニングポイント、分岐点があるのではないでしょうか。
かつて、アメリカの大リーグで活躍していたイチロー選手の言葉に次のようなものがあります。
「夢をつかむということは、一気にはできない。小さなことを積み重ねることで、いつの日か信じられないような力を出せるようになる。」
実際、イチロー選手は、「僕は高校生活の3年間、1日にたった10分ですが、 寝る前に必ず素振りをしました。その10分の素振りを1年365日、3年間続けました。これが誰よりもやった練習です。」と後の偉業につながる、高校生活で継続した小さな自主練習を振り返っています。
さて、皆さんの中には、この時期、引退をかけた大事な試合や発表会でいい結果を出したい、折角入った部活動で先輩たちのように上手になりたい、あるいは、今年こそは苦手科目を克服したい、受験勉強を頑張って、難関大学に絶対に合格したいなどの思いを抱いている人が多いと思います。
自らが立てた目標を実現していく過程においては、最初から上手にできたり、素晴らしい結果を出せたりする人はまずいません。失敗の連続です。そして、中々思わしい結果を出せない自分に対して、腹が立ち、時には心が折れそうになる時もあるかもしれません。自分には無理だとあきらめてしまう弱い自分が出てしまう時もあるかもしれません。
しかし、そんな時こそ、決してあきらめることなく、先生方や仲間を信じて、そして、他でもない、自分自身を信じて、努力を続ける先には、必ず結果がついてくることを忘れないでほしいと思います。
「夢をつかむということは、一気にはできない。
小さなことを積み重ねることで、いつの日か信じられないような力を出せるようになる。」
令和5年度、皆さんにとって、この浦和西高校で、最後まで粘り強く、あきらめず、それぞれのブレークスルーを勝ち取り、さらなる高みへと自らを成長させる、そんな充実した1年になってほしい。
自主自立、輝け、西校生!以上、始業式の講話とします。
「校長室だより」西高 HOT NEWSへ移動します
令和5年度より、「校長室だより」は「西高HOT NEWS」に移動します。
第75回卒業証書授与式が挙行されました【校長室だより】
3月16日(木)本校体育館にて、ご来賓、保護者(各ご家庭2名まで)のご臨席のもと、第75回卒業証書授与式が挙行されました。
厳粛な中にも心温まる卒業式を行うことができました。卒業生は西高での素晴らしい数々の思い出とともに、新たなステージへの希望を胸に、学び舎から巣立っていきました。
当日の式の様子はオンライン中継で配信され、卒業式に参列できなかったご家族や在校生たちには、自宅で卒業生の晴れの姿を見守っていただきました。
卒業証書授与の場面では、357名全員の生徒一人一人と目を合わせ、心の中で「おめでとう」と声をかけました。どの生徒も立派な立ち居振る舞いで、本校での3年間の学びで得た自信と誇りに満ちた表情を見せてくれました。
送辞では、在校生を代表して2年・吉田さんが先輩への感謝の言葉や卒業を祝う温かい言葉を述べました。また、卒業生を代表して、3年・西村さんが答辞として、お世話になった先生方へのお礼や西高への思い・保護者への感謝の気持ち、そしてこれから歩む人生への希望などを述べました。二人とも代表として相応しい立派なあいさつでした。
令和4年度の卒業記念品として、「体育館セレモニー吊り看板1枚」「屋外用セレモニー立て看板2枚」をいただきました。今回から早速使わせていただきました。今後も大切に使わせていただきます。ありがとうございました。
埼玉県立高校グローバルリーダー育成プロジェクト【校長室だより】
「埼玉県立高校グローバルリーダー育成プロジェクト」に、本校より2学年の磯部太君が参加し、1月14日よりシンガポールへ派遣されています。
埼玉県の選考試験を見事突破し、西高代表、県の代表としての参加です。
出発前に磯部君より全校生徒に対して、決意表明がありましたので、一部ご紹介します。
「・・・・・シンガポールへの1週間の研修旅行が始まります。シンガポールでは、現地大学生とのフィールドワーク、シンガポール国立大学での授業、ワークショップ、模擬国連などを行う予定です。どの活動でも、実用的な英語力や国際的な問題についての積極的な学習が必要となり決して楽に取り組めるものではないのですが、一緒に国内でプロジェクトをやり遂げてきた仲間と共に、この機会を最大限に生かし、県や国に貢献する人物に成長するきっかけにしたいと思います。」
今頃は現地で、日々刺激的な素晴らしい体験をしていることでしょう。この機会を通して大きく成長することを願っています。
後日改めて磯部君からの報告をご紹介します。
学校説明会を行いました
12月3日、年内最後となる学校説明会を、体育館にて開催しました。
150組(約300名)の中学生と保護者の方にご参加いただきました。
ご多用の中、また、大変寒い中、ご参加いただきありがとうございました。
学校説明会・学校公開に参加された方のご感想【校長室だより】
11月19日の学校説明会にご参加された方からのご感想を(ほんの一部ですが)ご紹介します。ご感想をお寄せいただきありがとうございました。
・伝統のある学校で年数が経っているのにも関わらず綺麗なのは皆さんの学校を大事にする気持ちの表れだと思います。授業も拝見しましたが集中して勉強に取り組んでいる姿が印象的でした。
・文武両道で理想的な学校だと思います。
・自主自立の精神、そのスローガンにふさわしく、どの生徒も自ら行動できることに関心させられました。校舎もとてもきれいに清掃されていて驚きました。
・3年生の教室を見学させて頂きました。自習の教室でも生徒さんは静かに勉強をされていて、さすがだと思いました。授業を行ってる教室でも中学生に気を取られる事なく集中して授業を受けICT機器を使用した授業が多く、内容理解がスムーズにできそうだと思いました。
・気になっていた生徒さんの服装が落ち着いていて良かったです。
・生徒の服装、高校の授業内容、プロジェクターを使用した授業が見られたことで、学校での生活の様子が分かりました。また、教室も廊下も明るく綺麗でした。
・ネット情報などで、生徒の自主性を重んじる校風だから何でも好きに自由に(生徒が)できてしまうのでは?と少々不安を感じていました。しかし実際に生徒の様子を見たり先生方にお会いして、思っていた様子とは違うことが分かり、公開授業を見に行き安心しました。
・静かに落ち着いた雰囲気で授業を受けており、良い雰囲気だなと思いました。また、休み時間も和気あいあいとしており楽しそうだなと感じました。
・どの先生のお話も熱心で、子ども達にも心を込めたメッセージを下さり、このような学校に子供を通わせたいなと大きな信頼を抱きました。とても有意義な時間となりました。ありがとうございます。
・部活動も見学させて頂きましたが、生徒の皆さん、すぐに挨拶をしてくださるし、見学の誘導をすぐにして下さりました。困っている時に、すぐに声をかけて教えてくれる生徒の方もいらっしゃり、素敵な校風だと思いました。
・公開授業や文化祭など何度か足を運ばせていただきましたが、今日は最後の受験生の親として訪問するのかと思うと感慨深いものがありました。浦和西高校合格という高い目標を持ち、ここまで努力してきたことが何より親としては嬉しく感じております。浦和西高校に巡り合えたことは娘にとって貴重な経験となりました。最後まで全力で走り切ります、本当にありがとうございました。
「国際バカロレアの教育手法を活用した授業」の研究授業が行われました【校長室だより】
埼玉県教育委員会による令和4年度「国際バカロレア等特色ある教育検討事業」において、本校の教員2名(英語科・数学科)が研究委員に指定され、「国際バカロレアの教育手法を活用した授業」について研究しています。
11月18日、本校において岩片教諭(数学科)による研究授業が行われました。当日は、大学教授及び教育委員会より4名の指導主事が来校し、ご指導いただきました。また、本校の教員も18名が授業を参観し「学習者主体の授業」について学びを深めました。
【参考】IBの学習の特徴は「探究型学習」です。「対話型学習」「グループワークによる協働学習」「プレゼンテーション」「問題解決・探究型学習」を行い、どこの国でもどんな言語でも即答できないトピックについて、一生懸命考えてディスカッションをし、自分の意見を深めていきます。
研究授業の様子 学び合う生徒たち 研究協議の様子
*国際バカロレア(IB)について(文部科学省IB教育推進コンソーシアム事務局HPより)
国際バカロレア機構が実施する国際的なプログラム。インターナショナルスクールの卒業生に、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保するとともに、学生の柔軟な知性の育成と国際理解教育の促進に資することを目的として発足。